コア・サテライト戦略のすすめ〜「ファンドをたくさん持っている=分散投資」ではありません 〜

分散投資を誤解されているお客様をお見受けします。
証券口座を拝見すると、投資信託を10本以上お持ちで「これだけ分けて持っているから、分散投資はバッチリですよね」とおっしゃるのですが、そのほとんどが新興国株式のアクティブファンド。

インド株ファンド、東南アジア株ファンド、中南米株ファンド……。銘柄名こそ違いますが、これらは「新興国の株式」という同じカゴに入った、よく似た値動きをする資産です。新興国通貨・株価の下落が起きれば、10本すべてが同時に大きく値下がりしてしまう可能性が高いのです。

こうした「ファンドの本数は多いのに、中身は偏っている」ケースは決して珍しくありません。今回は、この問題を解決する考え方として「コア・サテライト戦略」をご紹介し、あわせて分散投資の本当の意味と効果について解説します。

目次

「たくさん持つこと」と「分散すること」は違う

分散投資とは、単にファンドの本数を増やすことではありません。値動きの傾向が異なる資産に分けて投資することです。

資産同士の値動きの連動性を、専門的には「相関」と呼びます。同じ方向に動きやすい資産をいくら組み合わせても、リスクはほとんど減りません。新興国株ファンドを10本持つことは、例えるなら「傘を10本持って出かけたが、全部日傘だった」ようなもの。雨(=想定外の相場変動)が降ったとき、どれも役に立たないのです。

一方、値動きの異なる資産を組み合わせると、ある資産が下がったときに別の資産が下支えし、資産全体の振れ幅(リスク)を抑えることができます。これが分散投資の本質的な効果です。

分散の3つの軸

分散には、大きく3つの軸があります。

1. 資産の分散:株式と債券のように、性質の異なる資産に分けること。一般に、景気が良いときは株式が伸び、不透明なときは債券が相対的に安定します。

2. 地域の分散:国内と海外、先進国と新興国に分けること。日本経済が停滞していても、世界経済の成長を取り込めます。

3. 時間の分散:一度にまとめて買わず、積立などで購入時期を分けること。高値づかみのリスクを平準化できます。

冒頭の例は「銘柄の数」は分けていましたが、資産も地域も新興国株式に集中しており、3つの軸のどれも満たせていなかったわけです。

分散投資の効果を数字でイメージする

分散の効果を、簡単な数字で確認してみましょう。

投資の世界には「50%下落した資産が元の値段に戻るには、100%の上昇が必要」という怖い算数があります。100万円が50万円に半減した場合、そこから5割上昇しても75万円。元の100万円に戻るには、2倍にならなければいけません。大きく下落しないこと自体が、長期のリターンを守るうえで決定的に重要なのです。

実際、リーマン・ショックのような世界的な金融危機の局面では、新興国株式は1年足らずで資産価値が半分以下になるほどの下落を経験しました。もし資産のほとんどを新興国株ファンドで持っていたら、含み損に耐えられず底値で売ってしまった方も多かったはずです。狼狽して売却してしまえば、その後の回復相場の恩恵も受けられません。

一方、値動きの小さい債券を含む4資産に分散していた場合、下落幅は株式のみの場合よりずっと緩やかでした。下落局面では債券がクッションの役割を果たし、資産全体の目減りを抑えてくれるからです。「下がりにくいから、続けられる。続けられるから、回復と成長を取り込める」——これが分散投資の実践的な効果です。

もうひとつ大切なのは、将来どの資産が一番良い成績になるかは、誰にもわからないという事実です。ある年は新興国株が首位でも、翌年は最下位ということが当たり前に起こります。毎年の「勝ち馬」を当て続けることはプロでも困難だからこそ、あらかじめ幅広く持っておくことが、遠回りに見えて合理的な選択になるのです。

分散の土台は「主要4資産」

では、何に分散すればよいのでしょうか。基本となるのは、国内株式・国内債券・外国株式・外国債券の主要4資産です。

この4資産は、それぞれ役割が異なります。

  • 国内株式:日本経済の成長を取り込むリターンの源泉。
  • 外国株式:世界経済の成長を取り込む、長期的なリターンの主エンジン。
  • 国内債券:値動きが小さく、資産全体の安定を担う守りの資産。
  • 外国債券:国内債券より高い利回りが期待でき、通貨の分散にもなる中間的な存在。

この4資産をどんな割合で組み合わせるかを決めることを「アセットアロケーション(資産配分)」と呼びます。実は、長期投資の成果の大部分は、個別のファンド選びではなく、このアセットアロケーションで決まるといわれています。「どのファンドを買うか」より先に、「株式と債券を何対何で持つか」を決めることが重要なのです。

身近なお手本が、私たちの年金積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。GPIFは主要4資産をそれぞれ25%ずつ持つ基本ポートフォリオで、長期・分散運用を行っています。国民の大切な年金を預かる機関が採用しているのが、奇をてらわない4資産分散だという事実は、大いに参考になるはずです。

(参考)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)HP

GPIFの運用実績2025年の運用実績

分散投資の意義①1位になる資産は当てられない

分散投資の意義② 投資のリスクとは

分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな

コア・サテライト戦略とは

とはいえ、投資がお好きな方にとって、「4資産のインデックス運用だけ」というのは正直、物足りなく感じられるかもしれません。新興国の成長に賭けたい、応援したい企業の株を買いたい、話題のテーマに乗りたい——その気持ち自体は、投資を続ける原動力にもなる大切なものです。

そこでおすすめしたいのがコア・サテライト戦略です。資産全体を「コア(中核)」と「サテライト(衛星)」の2つに分けて運用する考え方です。

イメージ図は以下のとおりです

コア:資産形成の土台(全体の7〜9割)

コアは、老後資金や教育資金など、将来のために着実に育てる部分です。ここは主要4資産を中心にアセットアロケーションを組み、低コストのインデックスファンドなどで長期・積立・分散を徹底します。NISAのつみたて投資枠やiDeCoは、このコアの器として最適です。

コアに求められるのは、ホームランではなく「大負けしないこと」。市場平均並みのリターンを、できるだけ低いコストで、淡々と積み上げていきます。

コストにこだわる理由は、長期になるほど差が複利で膨らむからです。アクティブファンドの中には信託報酬が年1.5%を超えるものもありますが、主要なインデックスファンドなら年0.1%前後で持てます。この差は1年では小さく見えても、20年、30年と保有すれば、リターンを大きく左右します。コアは「面白みがないくらいがちょうどいい」部分なのです。

サテライト:攻めと楽しみの部分(全体の1〜3割)

サテライトは、より高いリターンを狙ったり、ご自身の興味や相場観を活かしたりする部分です。新興国ファンド、テーマ型のアクティブファンド、個別株、REIT、金など、コアでカバーしない尖った投資はここで行います。

ポイントは、サテライトで多少失敗しても、コアがあるので資産形成全体は揺らがないという構造にあることです。冒頭の方のように資産の大半を新興国ファンドに置くのではなく、「新興国投資はサテライトとして全体の2割まで」と枠を決めれば、好きな投資を楽しみながら、家計の土台は守れます。

コア・サテライト戦略の始め方

実際に組み立てる手順は、次の4ステップです。

ステップ1:コアとサテライトの比率を決める まず「サテライトは全体の何%までか」を先に決めます。初めての方や運用資金が老後資金の中心である方は、サテライトは1〜2割程度に抑えるのが無難です。

ステップ2:コアの資産配分を決める リスク許容度(値下がりにどこまで耐えられるか)に応じて、株式と債券の比率を決めます。若く運用期間が長い方は株式多め、リタイアが近い方は債券多めが基本です。迷ったら4資産均等やバランスファンドから始める方法もあります。

ステップ3:サテライトのルールを決める 「1銘柄への投資は全体の5%まで」「生活費の6か月分には手を付けない」など、自分なりのルールを設けます。感情で動きやすいのがサテライトだからこそ、ルールが効きます。

ステップ4:年1回リバランスする 運用を続けると、値上がりした資産の比率が膨らみ、当初の配分が崩れてきます。年に1回程度、増えすぎた資産を売り、減った資産を買い足して元の比率に戻します。これにより「高く売って安く買う」が仕組みとして実行できます。

よくある質問

Q. いま持っている新興国ファンドは、すべて売るべきですか?

必ずしもそうではありません。まず目指したいのは「構造の転換」です。今後の積立をコアとなる4資産中心に切り替え、時間をかけてコアの比率を高めていく方法なら、無理なく移行できます。含み損益や税金(NISA口座か課税口座か)によっても最適な手順は変わりますので、売却を急ぐ前に全体設計を見直すことをおすすめします。

Q. バランスファンド1本ではだめですか?

立派なコアになります。4資産や8資産に自動で分散し、リバランスまで行ってくれるバランスファンドは、手間をかけたくない方に向いています。そのうえで興味のある投資をサテライトとして少額加えれば、シンプルなコア・サテライト構造の完成です。

Q. サテライトはやらなくてもいいのでしょうか?

もちろんです。サテライトは「あってもよい」部分であって、必須ではありません。コアだけの運用でも資産形成としては十分成立します。逆に、投資が好きで研究熱心な方ほど、サテライトの枠を決めておく価値があります。熱意が暴走を招かないよう、仕組みでブレーキをかけるためです。

まとめ:好きな投資は、健全な土台の上で

ファンドの本数がいくら多くても、中身が同じ方向を向いていれば分散投資にはなりません。大切なのは、値動きの異なる主要4資産を組み合わせた土台(コア)をつくり、そのうえで興味のある投資(サテライト)を適切な枠内で楽しむことです。

投資への好奇心は、長く資産形成を続けるうえでの財産です。それを「家計を危うくする賭け」ではなく「土台の上のスパイス」にするのが、コア・サテライト戦略の知恵といえます。

ご自身のリスク許容度に合った資産配分やコアとサテライトの適切な比率は、年齢、家族構成、収入、これからのライフイベントによって一人ひとり異なります。「自分のポートフォリオ、偏っていないかな?」と気になった方は、お気軽にご相談ください。現在の保有ファンドの中身を一緒に確認しながら、あなたに合った資産配分を考えるお手伝いをいたします。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や個別の投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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