
「退職金とiDeCo、同時にもらうと損をするらしい」——そんな話を耳にして、不安になっていませんか。実は、退職金の受け取り方には複数の選択肢があり、選び方や受け取るタイミング次第で、手元に残る金額が大きく変わることがあります。
この記事では、以下の内容を分かりやすく解説します。
- 退職金の受け取り方3パターンの基本
- 一時金と年金で税金の計算が変わる仕組み
- 2026年1月に改正された「10年ルール」の背景
- あなたのケースに当てはめられる受け取り順パターンの整理
- パターン別の具体的な手取りシミュレーション
退職金の受け取り方には3つの選択肢がある

退職金の受け取り方は、大きく分けて「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3種の方法があり、それぞれメリットやデメリットがあります。どの方法を選ぶかによって、手元に残る金額や老後の資金計画が変わってくるため、事前に仕組みを理解しておくことが大切です。
それぞれの特徴をひとことで表すと、次のようになります。
- 一時金:全額をまとめて受け取る方法。税制優遇が大きく、まとまった資金をすぐに使える
- 年金:数年〜十数年に分けて受け取る方法。資金管理がしやすいが、税負担は増えやすい
- 併用:一時金と年金を組み合わせる方法。両方のメリットを部分的に活かせる
✅ どの方法が選べるかは、勤務先の退職金規定や導入している制度の種類によって異なります。まずはご自身の会社の退職金制度を確認しておきましょう。
なお、iDeCoにも退職金と同じく「一時金」「年金」「併用」の3つの受け取り方があります。ただし、どの方法を選べるか、年金の場合は何年に分けられるかは金融機関(運営管理機関)ごとに決められており、退職金の制度とは別に確認が必要です。
また、iDeCoは原則60歳になるまで資産を引き出すことができず、加入期間が10年に満たない場合は受け取り開始年齢が段階的に繰り下がるなど、退職金にはない独自の引き出し制限があります。この違いについては、こちらの記事(【初心者向け】50代からのiDeCoは遅くない?NISAとの使い分けも解説)で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
なぜ「受け取り方」で手取りが変わるのか?税金の仕組み

受け取り方によって税金の計算方法が変わるため、額面が同じでも手取り額に差が出ます。ここでは一時金と年金、それぞれの税制の仕組みを見ていきましょう。
一時金:退職所得控除が使える仕組み
退職金を一時金として受け取ると、税制上は「退職所得」として扱われ、他の所得とは分けて税金が計算される「分離課税」となるため、税負担の軽減につながるのがメリットです。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
参考:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
課税される退職所得は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」で計算されるため、控除額を大きく上回らない限り、税負担はかなり軽くなります。
💡 例えば勤続38年であれば、退職所得控除額は800万円+70万円×18年=2,060万円です。退職金がこの範囲に収まれば、税金はかかりません。
年金:雑所得として公的年金等控除が適用される仕組み
一方、年金形式で受け取る退職金は、所得税法上「公的年金等」として扱われます。所得区分は「雑所得」となり、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
⚠️ 退職一時金受け取り時の退職所得控除に比べると控除額が小さいため、税負担が増える可能性が高い点に注意が必要です。
公的年金等控除額は、年齢(65歳未満か65歳以上か)と年金の収入金額によって、次のように計算します(他の所得の合計額が1,000万円以下の場合)。
| 年金の収入金額(年額) | 65歳未満の控除額 | 65歳以上の控除額 |
|---|---|---|
| 130万円(65歳以上は330万円)以下 | 60万円 | 110万円 |
| 130万円超〜410万円以下 | 収入金額×25%+27万5,000円 | 同左 |
| 410万円超〜770万円以下 | 収入金額×15%+68万5,000円 | 同左 |
| 770万円超〜1,000万円以下 | 収入金額×5%+145万5,000円 | 同左 |
| 1,000万円超 | 195万5,000円 | 同左 |
参考:日本年金機構「公的年金等控除額の表」
✅ 表の通り、収入がそれほど多くない場合は、65歳以上のほうが控除額の最低保証(110万円)が大きく、税負担が軽くなりやすい仕組みになっています。さらに受け取った退職年金はその年の所得額に加算されるため、社会保険料が増加することがあるため、あわせて確認しておきましょう。
以下の表に、両者の違いをまとめます。
| 項目 | 一時金 | 年金 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 退職所得 | 雑所得 |
| 課税方式 | 分離課税 | 総合課税(他の所得と合算) |
| 主な控除 | 退職所得控除 | 公的年金等控除 |
| 社会保険料への影響 | 影響しにくい | 増加することがある |
| 向いている人 | まとまった資金が必要な人 | 定期収入で管理したい人 |
【2026年1月】「10年ルール」改正の背景と何が変わったのか

退職金とiDeCoの両方を一時金で受け取る場合、実はそれぞれに満額の退職所得控除を使えるとは限りません。同じ年に複数の退職所得を受け取ると、控除額の計算に使う勤続年数は、会社の勤続期間とiDeCoの加入期間のうち長いほうが採用され、期間が合算されるわけではないため、控除枠が思ったほど増えないことがあります。
この「控除の重複」を避けるため、受け取り時期を一定期間ずらせば、それぞれに独立した控除枠を使えるというルールが以前から存在していました。これがいわゆる「5年ルール」です。
なぜ「5年ルール」が問題視されたのか
「iDeCo→退職金」の順で受け取る場合、iDeCoを60歳で受け取り、5年以上空けて65歳で退職金を受け取れば、両方に満額の控除を適用できていました。
しかし、この仕組みは会社の定年年齢によって恩恵に差が出るという不公平さを抱えていました。60歳定年の会社員よりも、65歳定年の会社員のほうが有利になってしまう構造だったのです。税制の原則である「公平・中立・簡素」の観点から見直しが必要とされ、2026年1月の税制改正で、この間隔が「5年」から「10年」に延長されることになりました。
何が変わり、何が変わらなかったのか
改正内容を整理すると、次のようになります。
| 受け取り順 | 改正前 | 2026年1月以降 |
|---|---|---|
| iDeCo→退職金 | 5年ルール | 10年ルール(変更あり) |
| 退職金→iDeCo | 20年ルール(実務上19年ルール) | 変更なし |
あなたはどのケース?受け取り順パターン別の整理

ここからは、ご自身がどのパターンに当てはまるかを確認していきましょう。まず大前提として押さえておきたいのが、「iDeCo→退職金」の順で10年ルールをフルに活用するのは、現実的にはかなりハードルが高いという点です。
なぜ10年ルールの活用が難しいのか
10年ルールの恩恵をフルに受けるには、iDeCoを60歳で受け取り、退職金を70歳以降に受け取る必要があります。しかし、退職金を受け取る時期は基本的に会社の定年年齢に左右されるものであり、多くの会社員にとって自分の意志で70歳まで先延ばしすることは容易ではありません。定年再雇用の制度があっても、退職金の支給自体は定年時点で確定しているケースがほとんどです。
✅ そのため、「10年ルールを狙って完璧に節税する」ことよりも、「自分の会社では受け取り時期をどこまで調整できるか」を先に確認し、そのうえで現実的な選択肢の中から最も手取りが多くなる方法を選ぶという発想の転換が大切です。
パターン①:iDeCo→退職金の順で受け取る場合
- 退職金を受け取る前年からさかのぼって9年以内にiDeCoを受け取っている場合、重複期間について退職所得控除が調整される(10年ルール)
- 定年が60歳の会社員が、60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取る一般的なケースでは、間隔が5年しか空かないため10年ルールの対象となり、控除の調整を受ける
- 完全に控除の重複を避けるには70歳以降に退職金を受け取る必要があり、実現できる人は限られる
パターン②:退職金→iDeCoの順で受け取る場合
- 退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受け取ると、重複期間について退職所得控除が調整される(20年ルール)
- こちらは2026年の改正による変更はない
- 60歳で退職金を受け取り、iDeCoを75歳(受給可能な上限年齢)まで遅らせても19年ルールの対象になりやすく、こちらも回避は簡単ではない
パターン③:同時に受け取る場合
- 退職金とiDeCoを同じ年に一時金として受け取ると、控除額の計算期間は長いほうの年数のみが採用される
- 退職金とiDeCoの合計額がこの控除額の範囲内に収まっていれば、税負担は発生しない
- 一方、合計額が控除額を上回ると、超過分に対して課税されるため、退職金・iDeCoそれぞれの金額と勤続・加入年数の組み合わせ次第では、他のパターンより税負担が重くなることもある
- つまり、同時受け取りが一律に不利というわけではなく、自分の金額と控除額を比較して初めて有利・不利が判断できるケースバイケースのパターンと言える
- 手続きが1回で済むという分かりやすさはある
【フロー整理】
| 質問 | 該当パターン |
|---|---|
| 退職金とiDeCoを同じ時期に受け取る予定ですか? | → はい:パターン③(同時受け取り) |
| いいえ→ iDeCoを先に受け取る予定ですか? | → はい:パターン①(10年ルール対象) |
| いいえ→ 退職金を先に受け取る予定ですか? | → はい:パターン②(20年ルール対象) |
💡 パターン①・②はいずれも、間隔を十分に空けて控除の重複を完全に避けるのは難しいケースが大半です。パターン③(同時受け取り)は控除の重複そのものは避けられませんが、退職金とiDeCoの合計額が控除額の範囲内に収まっていれば、実際には税負担が生じないこともあります。「控除をフル活用できるか」にこだわりすぎず、まずは自分のiDeCoと退職金の受け取り金額と退職所得控除額を照らし合わせてみることが、実務上はより重要になります。
具体例で見る手取りシミュレーション

ここからは、前の章で整理した「パターン①iDeCo→退職金」「パターン②退職金→iDeCo」「パターン③同時受け取り」のそれぞれについて、具体的な金額で確認していきましょう。
まず押さえておきたい共通の計算式
退職所得にかかる税金は、次の2段階で計算します。
- 課税退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
- 所得税額=課税退職所得金額×税率-控除額(国税庁の速算表による)
パターン①・②では、後から受け取るほうの退職所得控除額を、次の(イ)(ロ)という2段階の計算で求めます(国税庁の規定による、いわゆる「A-B方式」)。
- (イ) 後から受け取るほうの、自分自身の期間(勤続期間または加入期間)をもとに、通常の計算式で求めた控除額
- (ロ) 「会社の勤続期間」と「iDeCoの加入期間」が重なっている年数を、勤続年数とみなして同じ計算式で求めた金額
- 控除額=(イ)-(ロ)
✅ ここで最も大切なポイントは、(ロ)で使うのは「重なっている年数」だけであり、重なっていない期間の分は(イ)からそのまま引かれずに残るということです。「後から受け取ると控除が一律に使えなくなる」わけではなく、重複していない期間があれば、その分はきちんと控除に反映されます。3つのパターンで、これを具体的に確認していきましょう。
パターン①:iDeCo→退職金の順で受け取る場合(10年ルール)
前提:iDeCoに25歳〜55歳の30年間加入し、60歳でiDeCoの一時金600万円を受け取る。その後も65歳定年まで勤務を続け(会社の勤続期間は25歳〜65歳の40年間)、65歳で退職金2,000万円を受け取る(iDeCo受け取りから5年後のため、10年ルールの対象)。
①iDeCo(60歳)の税額
iDeCoが先に受け取る側なので、通常通り自分自身の加入期間(30年)で控除額を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 600万円 |
| 退職所得控除額(加入30年)=800万円+70万円×(30年-20年) | 1,500万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
②退職金(65歳)の税額
後から受け取る退職金側で、(イ)(ロ)の調整が入ります。
- (イ) 退職金自身の勤続期間(40年)による控除額 = 800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
- (ロ) 重複期間の確認:iDeCoの加入期間(25〜55歳)と会社の勤続期間(25〜65歳)が重なっているのは25〜55歳の30年間です。55〜65歳の10年間は、iDeCoの加入をやめたあとも会社に勤め続けた期間なので、重複していません
- (ロ) 重複期間(30年)を勤続年数とみなして計算した金額 = 800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
- 退職金側の退職所得控除額 = (イ)-(ロ) = 2,200万円-1,500万円 = 700万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 2,000万円 |
| 退職所得控除額 | 700万円 |
| 課税退職所得金額=(2,000万円-700万円)×1/2 | 650万円 |
| 所得税額=650万円×20%-42万7,500円 | 約87万2,500円 |
①+②の合計=0円+87万2,500円=約87万2,500円
✅ ここがポイントです。10年ルールの対象になっても、控除が0円になるわけではありません。iDeCoの加入をやめたあとも会社に勤め続けた10年間(55〜65歳)が重複していないため、その10年分の控除(700万円)がきちんと残っています。
パターン②:退職金→iDeCoの順で受け取る場合(19年ルール)
前提:会社に25歳〜60歳の35年間勤務し、60歳で退職金1,800万円を受け取る。その後、退職金のない企業に転職し、iDeCoの掛金拠出を65歳まで継続(iDeCoの加入期間は25歳〜65歳の40年間)。65歳でiDeCoの一時金1,000万円を受け取る(退職金受け取りから5年後のため、19年ルールの対象)。
①退職金(60歳)の税額
退職金が先に受け取る側なので、通常通り自分自身の勤続期間(35年)で控除額を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 1,800万円 |
| 退職所得控除額(勤続35年)=800万円+70万円×(35年-20年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
②iDeCo(65歳)の税額
後から受け取るiDeCo側で、(イ)(ロ)の調整が入ります。
- (イ) iDeCo自身の加入期間(40年)による控除額 = 800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
- (ロ) 重複期間の確認:会社の勤続期間(25〜60歳)とiDeCoの加入期間(25〜65歳)が重なっているのは25〜60歳の35年間です。60〜65歳の5年間は、転職後もiDeCoだけ継続していた期間なので、重複していません
- (ロ) 重複期間(35年)を勤続年数とみなして計算した金額 = 800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円
- iDeCo側の退職所得控除額 = (イ)-(ロ) = 2,200万円-1,850万円 = 350万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 1,000万円 |
| 退職所得控除額 | 350万円 |
| 課税退職所得金額=(1,000万円-350万円)×1/2 | 325万円 |
| 所得税額=325万円×10%-9万7,500円 | 約22万7,500円 |
①+②の合計=0円+22万7,500円=約22万7,500円
✅ ここでも同じことが言えます。退職後にiDeCoだけ継続して加入した5年間(60〜65歳)が会社の勤続期間と重複していないため、その5年分の控除(350万円)がきちんと反映されています。「退職金より後にiDeCoを受け取ると控除が一律に使えなくなる」というのは誤解であり、重複していない期間があれば、その分はしっかり控除される、ということがこの例からも分かります。
パターン③:同時に受け取る場合
前提:会社に25歳〜60歳の35年間勤務し、iDeCoにも同じ25歳〜60歳の35年間加入。60歳で退職金1,200万円とiDeCoの一時金600万円を同時に受け取る。
同じ年に2つの退職所得を受け取る場合、パターン①・②のような(イ)(ロ)の調整計算は行わず、2つの期間のうち長いほうの年数で計算した控除額を、まとめて1つだけ使うという、より単純な仕組みになります。今回は勤続期間・加入期間とも同じ35年なので、控除額は次の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入合計(退職金1,200万円+iDeCo600万円) | 1,800万円 |
| 退職所得控除額(35年)=800万円+70万円×(35年-20年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入合計が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
✅ このケースでは、同時に受け取っても収入合計(1,800万円)が控除額(1,850万円)の範囲内に収まっているため、税金はかかりません。
同時受け取り、合計額が控除枠を超える場合
一方、同じ勤続35年・加入35年のケースでも、金額が変われば結果は変わります。退職金1,800万円とiDeCo600万円を同時に受け取り、合計2,400万円になる場合を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入合計(退職金1,800万円+iDeCo600万円) | 2,400万円 |
| 退職所得控除額(35年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額=(2,400万円-1,850万円)×1/2 | 275万円 |
| 所得税額=275万円×10%-9万7,500円 | 約17万7,500円 |
⚠️ このケースでは、合計額が控除枠を550万円超えているため、その半分の275万円が課税対象になり、約17万7,500円の税金がかかります。「同時に受け取れば税金がかからない」わけではなく、退職金とiDeCoの合計額が控除枠に収まるかどうかで結果が変わる、という点がパターン③の本質です。パターン③は、パターン①・②のような重複期間の調整とは異なり、「合計額が控除枠に収まるかどうか」だけで決まるシンプルな仕組みです。だからこそ、金額次第で有利にも不利にもなる、ケースバイケースのパターンだと言えます。合計額が控除枠を大きく超える見込みの方は、同時受け取りよりも、パターン②(退職金を先に受け取り、iDeCoは翌年以降にずらす)のほうが、非重複期間の分だけ控除を上乗せできる可能性があります。
パターンのまとめ
| パターン | 受け取り方の前提 | 所得税額の目安 |
|---|---|---|
| ①iDeCo→退職金 | iDeCo(60歳・600万円)→退職金(65歳・2,000万円) | 約87万2,500円 |
| ②退職金→iDeCo | 退職金(60歳・1,800万円)→iDeCo(65歳・1,000万円) | 約22万7,500円 |
| ③同時受け取り(枠内) | 退職金(1,200万円)+iDeCo(600万円)を60歳で同時に | 0円 |
| ③同時受け取り(枠超過) | 退職金(1,800万円)+iDeCo(600万円)を60歳で同時に | 約17万7,500円 |
⚠️ これらは前提となる金額や年数が異なるため、税額を単純比較できるものではありません。あくまで、次の2点を確認するための試算です。
- パターン①・②(重複期間がある受け取り順)でも、非重複期間があれば、その分は控除としてきちんと反映される
- パターン③(同時受け取り)は「常に有利」なわけではなく、退職金とiDeCoの合計額が控除枠に収まるかどうかで結果が大きく変わる
この試算は所得税のみを比較したものです(復興特別所得税・住民税は含みません)。ご自身の実際の勤続期間・加入期間・金額に基づく試算は、勤務先やiDeCoの運営管理機関に確認することをおすすめします。
iDeCoを年金で受け取る、または一部を年金にするケースは?

ここまでは、iDeCoを一時金としてまとめて受け取ることを前提に解説してきました。しかし、iDeCoは年金として分割で受け取ったり、一時金と年金を組み合わせて受け取ったりすることもできます。最後に、この選択肢についても簡単に触れておきます。
iDeCoを年金で受け取ると、税制上の扱いが一時金の場合と大きく変わります。一時金は「退職所得」として分離課税(他の所得と合算されない)でしたが、年金は「雑所得(公的年金等)」として総合課税、つまり公的年金や給与など他の所得と合算して税額が計算されます。
適用される控除も、退職所得控除ではなく、前述の「公的年金等控除」です。65歳以上であれば最低でも110万円の控除がありますが、退職所得控除(勤続20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年))と比べると、控除の規模はかなり小さくなります。
⚠️ さらに、年金として受け取った金額はその年の所得に上乗せされるため、国民健康保険料や介護保険料など社会保険料の負担が増える可能性もあります。
これらを踏まえると、iDeCoをあえて年金で受け取るメリットは、多くの方にとってはあまり大きくありません。総合課税で他の所得と合算される分、税負担・社会保険料負担ともに増えやすいためです。
✅ ただし、例外的に検討する価値があるのは、公的年金など他の所得が少なく、公的年金等控除の枠に余裕がある方です。例えば、繰下げ受給などで公的年金収入がまだ少ない時期に、その控除枠の範囲内でiDeCoの一部を年金として受け取れば、控除を無駄にすることなく低い税負担で受け取れる可能性があります。こうしたケースでは、一時金と年金を併用し、一部だけを年金で受け取るという選択肢も含めて検討する余地があります。
ご自身の他の所得の見込みによって有利・不利が変わってくるため、該当しそうな方は、iDeCoの運営管理機関やFPに相談しながら試算してみることをおすすめします。
よくある質問

Q1. 会社の退職金を受け取る時期は自分で選べますか?
多くの会社員の場合、退職金の受け取り時期は会社の定年年齢に連動しており、自分の意志で自由に選べるケースは多くありません。定年再雇用制度があっても、退職金の支給自体は定年時点で確定していることがほとんどです。まずはご自身の勤務先の退職金規定を確認しましょう。
Q2. iDeCoの受け取りを70歳まで遅らせても大丈夫ですか?
iDeCo・企業型DCの受け取りは75歳まで延ばすことができます。70歳以降まで遅らせれば控除の重複を避けやすくなりますが、その間は資産を運用し続けることになるため、相場変動リスクも考慮する必要があります。
Q3. 企業型DBとDCで扱いは違いますか?
確定給付企業年金(DB)は、事業主があらかじめ定めた給付内容に基づき確実に受け取れる制度で、受け取り方法は年金または一時金です。一時金で受け取る場合は、退職金と同様に退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。DBもDCも、一時金で受け取る場合の税制上の考え方は基本的に共通しています。
Q4. 申告書を出し忘れたらどうなりますか?
退職の際には、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。これを提出せずに退職金を受け取ると、退職所得控除が適用されないため、一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。後日確定申告を行うことで、正しい税額との差額の還付を受けられます。
まとめ

退職金とiDeCoの受け取り方について、押さえておきたいポイントを整理します。
- 退職金の受け取り方には「一時金」「年金」「併用」の3パターンがある
- 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除が適用され、控除の大きさが異なる
- 2026年1月から「iDeCo→退職金」の順のルールが5年から10年に延長された
- 「退職金→iDeCo」の順の20年ルールは変更されていない
- 定年年齢の関係で、どちらのルールも完全に回避するのは現実的に難しいケースが多い
退職金とiDeCoの組み合わせは、金額や勤続年数、受け取り時期によって最適な選択が変わります。ご自身やご家族の状況に当てはめた具体的なシミュレーションが必要な場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談することも検討してみてください。
退職金とiDeCoの受け取り方で損しないために。2026年1月改正の「10年ルール」の背景から、一時金・年金の税制の違い、あなたに当てはまる受け取り順パターン、具体的な手取りシミュレーションまで、現役FPが初心者にもわかりやすく解説します。(133字)
記事の要点3つ
- 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除で税負担が異なる
- 2026年1月からiDeCo→退職金の「10年ルール」が始まったが完全回避は難しい
- 受け取り順が調整対象になっても、重複していない期間があれば、その分はきちんと控除される
内部リンク提案
fp-happirich.comの既存ブログ記事一覧を確認できなかったため、内部リンクの提案は保留とさせていただきます。関連しそうなテーマ(iDeCo・NISA、50代の保険見直し、老後資金、年金分割など)の既存記事URLを教えていただければ、以下の形で本記事への相互リンクを追加いたします。
- 本記事から既存記事へ:関連する箇所に「(関連記事:○○)」の形でリンクを設置
- 既存記事から本記事へ:各記事の末尾や関連情報として本記事へのリンクを設置
【2026年版】現役FPが解説する退職金×iDeCo受け取りの正解
「退職金とiDeCo、同時にもらうと損をするらしい」——そんな話を耳にして、不安になっていませんか。実は、退職金の受け取り方には複数の選択肢があり、選び方や受け取るタイミング次第で、手元に残る金額が大きく変わることがあります。
この記事では、以下の内容を分かりやすく解説します。
- 退職金の受け取り方3パターンの基本
- 一時金と年金で税金の計算が変わる仕組み
- 2026年1月に改正された「10年ルール」の
- あなたのケースに当てはめられる受け取り順パターンの整理
- パターン別の具体的な手取りシミュレーション
退職金の受け取り方には3つの選択肢がある
退職金の受け取り方は、大きく分けて「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3種の方法があり、それぞれメリットやデメリットがあります。どの方法を選ぶかによって、手元に残る金額や老後の資金計画が変わってくるため、事前に仕組みを理解しておくことが大切です。
それぞれの特徴をひとことで表すと、次のようになります。
- 一時金:全額をまとめて受け取る方法。税制優遇が大きく、まとまった資金をすぐに使える
- 年金:数年〜十数年に分けて受け取る方法。資金管理がしやすいが、税負担は増えやすい
- 併用:一時金と年金を組み合わせる方法。両方のメリットを部分的に活かせる
✅ どの方法が選べるかは、勤務先の退職金規定や導入している制度の種類によって異なります。まずはご自身の会社の退職金制度を確認しておきましょう。
なお、iDeCoにも退職金と同じく「一時金」「年金」「併用」の3つの受け取り方があります。ただし、どの方法を選べるか、年金の場合は何年に分けられるかは金融機関(運営管理機関)ごとに決められており、退職金の制度とは別に確認が必要です。
また、iDeCoは原則60歳になるまで資産を引き出すことができず、加入期間が10年に満たない場合は受け取り開始年齢が段階的に繰り下がるなど、退職金にはない独自の引き出し制限があります。この違いについては、こちらの記事(【初心者向け】50代からのiDeCoは遅くない?NISAとの使い分けも解説)で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
なぜ「受け取り方」で手取りが変わるのか?税金の仕組み
受け取り方によって税金の計算方法が変わるため、額面が同じでも手取り額に差が出ます。ここでは一時金と年金、それぞれの税制の仕組みを見ていきましょう。
一時金:退職所得控除が使える仕組み
退職金を一時金として受け取ると、税制上は「退職所得」として扱われ、他の所得とは分けて税金が計算される「分離課税」となるため、税負担の軽減につながるのがメリットです。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
参考:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
課税される退職所得は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」で計算されるため、控除額を大きく上回らない限り、税負担はかなり軽くなります。
💡 例えば勤続38年であれば、退職所得控除額は800万円+70万円×18年=2,060万円です。退職金がこの範囲に収まれば、税金はかかりません。
年金:雑所得として公的年金等控除が適用される仕組み
一方、年金形式で受け取る退職金は、所得税法上「公的年金等」として扱われます。所得区分は「雑所得」となり、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
⚠️ 退職一時金受け取り時の退職所得控除に比べると控除額が小さいため、税負担が増える可能性が高い点に注意が必要です。
公的年金等控除額は、年齢(65歳未満か65歳以上か)と年金の収入金額によって、次のように計算します(他の所得の合計額が1,000万円以下の場合)。
| 年金の収入金額(年額) | 65歳未満の控除額 | 65歳以上の控除額 |
|---|---|---|
| 130万円(65歳以上は330万円)以下 | 60万円 | 110万円 |
| 130万円超〜410万円以下 | 収入金額×25%+27万5,000円 | 同左 |
| 410万円超〜770万円以下 | 収入金額×15%+68万5,000円 | 同左 |
| 770万円超〜1,000万円以下 | 収入金額×5%+145万5,000円 | 同左 |
| 1,000万円超 | 195万5,000円 | 同左 |
参考:日本年金機構「公的年金等控除額の表」
✅ 表の通り、収入がそれほど多くない場合は、65歳以上のほうが控除額の最低保証(110万円)が大きく、税負担が軽くなりやすい仕組みになっています。さらに受け取った退職年金はその年の所得額に加算されるため、社会保険料が増加することがあるため、あわせて確認しておきましょう。
以下の表に、両者の違いをまとめます。
| 項目 | 一時金 | 年金 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 退職所得 | 雑所得 |
| 課税方式 | 分離課税 | 総合課税(他の所得と合算) |
| 主な控除 | 退職所得控除 | 公的年金等控除 |
| 社会保険料への影響 | 影響しにくい | 増加することがある |
| 向いている人 | まとまった資金が必要な人 | 定期収入で管理したい人 |
【2026年1月】「10年ルール」改正の背景と何が変わったのか
退職金とiDeCoの両方を一時金で受け取る場合、実はそれぞれに満額の退職所得控除を使えるとは限りません。同じ年に複数の退職所得を受け取ると、控除額の計算に使う勤続年数は、会社の勤続期間とiDeCoの加入期間のうち長いほうが採用され、期間が合算されるわけではないため、控除枠が思ったほど増えないことがあります。
この「控除の重複」を避けるため、受け取り時期を一定期間ずらせば、それぞれに独立した控除枠を使えるというルールが以前から存在していました。これがいわゆる「5年ルール」です。
なぜ「5年ルール」が問題視されたのか
「iDeCo→退職金」の順で受け取る場合、iDeCoを60歳で受け取り、5年以上空けて65歳で退職金を受け取れば、両方に満額の控除を適用できていました。
しかし、この仕組みは会社の定年年齢によって恩恵に差が出るという不公平さを抱えていました。60歳定年の会社員よりも、65歳定年の会社員のほうが有利になってしまう構造だったのです。税制の原則である「公平・中立・簡素」の観点から見直しが必要とされ、2026年1月の税制改正で、この間隔が「5年」から「10年」に延長されることになりました。
何が変わり、何が変わらなかったのか
改正内容を整理すると、次のようになります。
| 受け取り順 | 改正前 | 2026年1月以降 |
|---|---|---|
| iDeCo→退職金 | 5年ルール | 10年ルール(変更あり) |
| 退職金→iDeCo | 20年ルール(実務上19年ルール) | 変更なし |
あなたはどのケース?受け取り順パターン別の整理
ここからは、ご自身がどのパターンに当てはまるかを確認していきましょう。まず大前提として押さえておきたいのが、「iDeCo→退職金」の順で10年ルールをフルに活用するのは、現実的にはかなりハードルが高いという点です。
なぜ10年ルールの活用が難しいのか
10年ルールの恩恵をフルに受けるには、iDeCoを60歳で受け取り、退職金を70歳以降に受け取る必要があります。しかし、退職金を受け取る時期は基本的に会社の定年年齢に左右されるものであり、多くの会社員にとって自分の意志で70歳まで先延ばしすることは容易ではありません。定年再雇用の制度があっても、退職金の支給自体は定年時点で確定しているケースがほとんどです。
✅ そのため、「10年ルールを狙って完璧に節税する」ことよりも、「自分の会社では受け取り時期をどこまで調整できるか」を先に確認し、そのうえで現実的な選択肢の中から最も手取りが多くなる方法を選ぶという発想の転換が大切です。
パターン①:iDeCo→退職金の順で受け取る場合
- 退職金を受け取る前年からさかのぼって9年以内にiDeCoを受け取っている場合、重複期間について退職所得控除が調整される(10年ルール)
- 定年が60歳の会社員が、60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取る一般的なケースでは、間隔が5年しか空かないため10年ルールの対象となり、控除の調整を受ける
- 完全に控除の重複を避けるには70歳以降に退職金を受け取る必要があり、実現できる人は限られる
パターン②:退職金→iDeCoの順で受け取る場合
- 退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受け取ると、重複期間について退職所得控除が調整される(20年ルール)
- こちらは2026年の改正による変更はない
- 60歳で退職金を受け取り、iDeCoを75歳(受給可能な上限年齢)まで遅らせても19年ルールの対象になりやすく、こちらも回避は簡単ではない
パターン③:同時に受け取る場合
- 退職金とiDeCoを同じ年に一時金として受け取ると、控除額の計算期間は長いほうの年数のみが採用される
- 退職金とiDeCoの合計額がこの控除額の範囲内に収まっていれば、税負担は発生しない
- 一方、合計額が控除額を上回ると、超過分に対して課税されるため、退職金・iDeCoそれぞれの金額と勤続・加入年数の組み合わせ次第では、他のパターンより税負担が重くなることもある
- つまり、同時受け取りが一律に不利というわけではなく、自分の金額と控除額を比較して初めて有利・不利が判断できるケースバイケースのパターンと言える
- 手続きが1回で済むという分かりやすさはある
【フロー整理】
| 質問 | 該当パターン |
|---|---|
| 退職金とiDeCoを同じ時期に受け取る予定ですか? | → はい:パターン③(同時受け取り) |
| いいえ→ iDeCoを先に受け取る予定ですか? | → はい:パターン①(10年ルール対象) |
| いいえ→ 退職金を先に受け取る予定ですか? | → はい:パターン②(20年ルール対象) |
💡 パターン①・②はいずれも、間隔を十分に空けて控除の重複を完全に避けるのは難しいケースが大半です。パターン③(同時受け取り)は控除の重複そのものは避けられませんが、退職金とiDeCoの合計額が控除額の範囲内に収まっていれば、実際には税負担が生じないこともあります。「控除をフル活用できるか」にこだわりすぎず、まずは自分のiDeCoと退職金の受け取り金額と退職所得控除額を照らし合わせてみることが、実務上はより重要になります。
具体例で見る手取りシミュレーション
ここからは、前の章で整理した「パターン①iDeCo→退職金」「パターン②退職金→iDeCo」「パターン③同時受け取り」のそれぞれについて、具体的な金額で確認していきましょう。
まず押さえておきたい共通の計算式
退職所得にかかる税金は、次の2段階で計算します。
- 課税退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
- 所得税額=課税退職所得金額×税率-控除額(国税庁の速算表による)
パターン①・②では、後から受け取るほうの退職所得控除額を、次の(イ)(ロ)という2段階の計算で求めます(国税庁の規定による、いわゆる「A-B方式」)。
- (イ) 後から受け取るほうの、自分自身の期間(勤続期間または加入期間)をもとに、通常の計算式で求めた控除額
- (ロ) 「会社の勤続期間」と「iDeCoの加入期間」が重なっている年数を、勤続年数とみなして同じ計算式で求めた金額
- 控除額=(イ)-(ロ)
✅ ここで最も大切なポイントは、(ロ)で使うのは「重なっている年数」だけであり、重なっていない期間の分は(イ)からそのまま引かれずに残るということです。「後から受け取ると控除が一律に使えなくなる」わけではなく、重複していない期間があれば、その分はきちんと控除に反映されます。3つのパターンで、これを具体的に確認していきましょう。
パターン①:iDeCo→退職金の順で受け取る場合(10年ルール)
前提:iDeCoに25歳〜55歳の30年間加入し、60歳でiDeCoの一時金600万円を受け取る。その後も65歳定年まで勤務を続け(会社の勤続期間は25歳〜65歳の40年間)、65歳で退職金2,000万円を受け取る(iDeCo受け取りから5年後のため、10年ルールの対象)。
①iDeCo(60歳)の税額
iDeCoが先に受け取る側なので、通常通り自分自身の加入期間(30年)で控除額を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 600万円 |
| 退職所得控除額(加入30年)=800万円+70万円×(30年-20年) | 1,500万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
②退職金(65歳)の税額
後から受け取る退職金側で、(イ)(ロ)の調整が入ります。
- (イ) 退職金自身の勤続期間(40年)による控除額 = 800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
- (ロ) 重複期間の確認:iDeCoの加入期間(25〜55歳)と会社の勤続期間(25〜65歳)が重なっているのは25〜55歳の30年間です。55〜65歳の10年間は、iDeCoの加入をやめたあとも会社に勤め続けた期間なので、重複していません
- (ロ) 重複期間(30年)を勤続年数とみなして計算した金額 = 800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
- 退職金側の退職所得控除額 = (イ)-(ロ) = 2,200万円-1,500万円 = 700万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 2,000万円 |
| 退職所得控除額 | 700万円 |
| 課税退職所得金額=(2,000万円-700万円)×1/2 | 650万円 |
| 所得税額=650万円×20%-42万7,500円 | 約87万2,500円 |
①+②の合計=0円+87万2,500円=約87万2,500円
✅ ここがポイントです。10年ルールの対象になっても、控除が0円になるわけではありません。iDeCoの加入をやめたあとも会社に勤め続けた10年間(55〜65歳)が重複していないため、その10年分の控除(700万円)がきちんと残っています。
パターン②:退職金→iDeCoの順で受け取る場合(19年ルール)
前提:会社に25歳〜60歳の35年間勤務し、60歳で退職金1,800万円を受け取る。その後、退職金のない企業に転職し、iDeCoの掛金拠出を65歳まで継続(iDeCoの加入期間は25歳〜65歳の40年間)。65歳でiDeCoの一時金1,000万円を受け取る(退職金受け取りから5年後のため、19年ルールの対象)。
①退職金(60歳)の税額
退職金が先に受け取る側なので、通常通り自分自身の勤続期間(35年)で控除額を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 1,800万円 |
| 退職所得控除額(勤続35年)=800万円+70万円×(35年-20年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
②iDeCo(65歳)の税額
後から受け取るiDeCo側で、(イ)(ロ)の調整が入ります。
- (イ) iDeCo自身の加入期間(40年)による控除額 = 800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
- (ロ) 重複期間の確認:会社の勤続期間(25〜60歳)とiDeCoの加入期間(25〜65歳)が重なっているのは25〜60歳の35年間です。60〜65歳の5年間は、転職後もiDeCoだけ継続していた期間なので、重複していません
- (ロ) 重複期間(35年)を勤続年数とみなして計算した金額 = 800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円
- iDeCo側の退職所得控除額 = (イ)-(ロ) = 2,200万円-1,850万円 = 350万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入金額 | 1,000万円 |
| 退職所得控除額 | 350万円 |
| 課税退職所得金額=(1,000万円-350万円)×1/2 | 325万円 |
| 所得税額=325万円×10%-9万7,500円 | 約22万7,500円 |
①+②の合計=0円+22万7,500円=約22万7,500円
✅ ここでも同じことが言えます。退職後にiDeCoだけ継続して加入した5年間(60〜65歳)が会社の勤続期間と重複していないため、その5年分の控除(350万円)がきちんと反映されています。「退職金より後にiDeCoを受け取ると控除が一律に使えなくなる」というのは誤解であり、重複していない期間があれば、その分はしっかり控除される、ということがこの例からも分かります。
パターン③:同時に受け取る場合
前提:会社に25歳〜60歳の35年間勤務し、iDeCoにも同じ25歳〜60歳の35年間加入。60歳で退職金1,200万円とiDeCoの一時金600万円を同時に受け取る。
同じ年に2つの退職所得を受け取る場合、パターン①・②のような(イ)(ロ)の調整計算は行わず、2つの期間のうち長いほうの年数で計算した控除額を、まとめて1つだけ使うという、より単純な仕組みになります。今回は勤続期間・加入期間とも同じ35年なので、控除額は次の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入合計(退職金1,200万円+iDeCo600万円) | 1,800万円 |
| 退職所得控除額(35年)=800万円+70万円×(35年-20年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額 | 収入合計が控除額を下回るため 0円 |
| 所得税額 | 0円 |
✅ このケースでは、同時に受け取っても収入合計(1,800万円)が控除額(1,850万円)の範囲内に収まっているため、税金はかかりません。
同時受け取り、合計額が控除枠を超える場合
一方、同じ勤続35年・加入35年のケースでも、金額が変われば結果は変わります。退職金1,800万円とiDeCo600万円を同時に受け取り、合計2,400万円になる場合を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入合計(退職金1,800万円+iDeCo600万円) | 2,400万円 |
| 退職所得控除額(35年) | 1,850万円 |
| 課税退職所得金額=(2,400万円-1,850万円)×1/2 | 275万円 |
| 所得税額=275万円×10%-9万7,500円 | 約17万7,500円 |
⚠️ このケースでは、合計額が控除枠を550万円超えているため、その半分の275万円が課税対象になり、約17万7,500円の税金がかかります。「同時に受け取れば税金がかからない」わけではなく、退職金とiDeCoの合計額が控除枠に収まるかどうかで結果が変わる、という点がパターン③の本質です。パターン③は、パターン①・②のような重複期間の調整とは異なり、「合計額が控除枠に収まるかどうか」だけで決まるシンプルな仕組みです。だからこそ、金額次第で有利にも不利にもなる、ケースバイケースのパターンだと言えます。合計額が控除枠を大きく超える見込みの方は、同時受け取りよりも、パターン②(退職金を先に受け取り、iDeCoは翌年以降にずらす)のほうが、非重複期間の分だけ控除を上乗せできる可能性があります。
パターンのまとめ
| パターン | 受け取り方の前提 | 所得税額の目安 |
|---|---|---|
| ①iDeCo→退職金 | iDeCo(60歳・600万円)→退職金(65歳・2,000万円) | 約87万2,500円 |
| ②退職金→iDeCo | 退職金(60歳・1,800万円)→iDeCo(65歳・1,000万円) | 約22万7,500円 |
| ③同時受け取り(枠内) | 退職金(1,200万円)+iDeCo(600万円)を60歳で同時に | 0円 |
| ③同時受け取り(枠超過) | 退職金(1,800万円)+iDeCo(600万円)を60歳で同時に | 約17万7,500円 |
⚠️ これらは前提となる金額や年数が異なるため、税額を単純比較できるものではありません。あくまで、次の2点を確認するための試算です。
- パターン①・②(重複期間がある受け取り順)でも、非重複期間があれば、その分は控除としてきちんと反映される
- パターン③(同時受け取り)は「常に有利」なわけではなく、退職金とiDeCoの合計額が控除枠に収まるかどうかで結果が大きく変わる
この試算は所得税のみを比較したものです(復興特別所得税・住民税は含みません)。ご自身の実際の勤続期間・加入期間・金額に基づく試算は、勤務先やiDeCoの運営管理機関に確認することをおすすめします。
iDeCoを年金で受け取る、または一部を年金にするケースは?
ここまでは、iDeCoを一時金としてまとめて受け取ることを前提に解説してきました。しかし、iDeCoは年金として分割で受け取ったり、一時金と年金を組み合わせて受け取ったりすることもできます。最後に、この選択肢についても簡単に触れておきます。
iDeCoを年金で受け取ると、税制上の扱いが一時金の場合と大きく変わります。一時金は「退職所得」として分離課税(他の所得と合算されない)でしたが、年金は「雑所得(公的年金等)」として総合課税、つまり公的年金や給与など他の所得と合算して税額が計算されます。
適用される控除も、退職所得控除ではなく、前述の「公的年金等控除」です。65歳以上であれば最低でも110万円の控除がありますが、退職所得控除(勤続20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年))と比べると、控除の規模はかなり小さくなります。
⚠️ さらに、年金として受け取った金額はその年の所得に上乗せされるため、国民健康保険料や介護保険料など社会保険料の負担が増える可能性もあります。
これらを踏まえると、iDeCoをあえて年金で受け取るメリットは、多くの方にとってはあまり大きくありません。総合課税で他の所得と合算される分、税負担・社会保険料負担ともに増えやすいためです。
✅ ただし、例外的に検討する価値があるのは、公的年金など他の所得が少なく、公的年金等控除の枠に余裕がある方です。例えば、繰下げ受給などで公的年金収入がまだ少ない時期に、その控除枠の範囲内でiDeCoの一部を年金として受け取れば、控除を無駄にすることなく低い税負担で受け取れる可能性があります。こうしたケースでは、一時金と年金を併用し、一部だけを年金で受け取るという選択肢も含めて検討する余地があります。
ご自身の他の所得の見込みによって有利・不利が変わってくるため、該当しそうな方は、iDeCoの運営管理機関やFPに相談しながら試算してみることをおすすめします。
よくある質問
Q1. 会社の退職金を受け取る時期は自分で選べますか?
多くの会社員の場合、退職金の受け取り時期は会社の定年年齢に連動しており、自分の意志で自由に選べるケースは多くありません。定年再雇用制度があっても、退職金の支給自体は定年時点で確定していることがほとんどです。まずはご自身の勤務先の退職金規定を確認しましょう。
Q2. iDeCoの受け取りを70歳まで遅らせても大丈夫ですか?
iDeCo・企業型DCの受け取りは75歳まで延ばすことができます。70歳以降まで遅らせれば控除の重複を避けやすくなりますが、その間は資産を運用し続けることになるため、相場変動リスクも考慮する必要があります。
Q3. 企業型DBとDCで扱いは違いますか?
確定給付企業年金(DB)は、事業主があらかじめ定めた給付内容に基づき確実に受け取れる制度で、受け取り方法は年金または一時金です。一時金で受け取る場合は、退職金と同様に退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。DBもDCも、一時金で受け取る場合の税制上の考え方は基本的に共通しています。
Q4. 申告書を出し忘れたらどうなりますか?
退職の際には、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。これを提出せずに退職金を受け取ると、退職所得控除が適用されないため、一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。後日確定申告を行うことで、正しい税額との差額の還付を受けられます。
まとめ
退職金とiDeCoの受け取り方について、押さえておきたいポイントを整理します。
- 退職金の受け取り方には「一時金」「年金」「併用」の3パターンがある
- 一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除が適用され、控除の大きさが異なる
- 2026年1月から「iDeCo→退職金」の順のルールが5年から10年に延長された
- 「退職金→iDeCo」の順の20年ルールは変更されていない
- 定年年齢の関係で、どちらのルールも完全に回避するのは現実的に難しいケースが多い
退職金とiDeCoの組み合わせは、金額や勤続年数、受け取り時期によって最適な選択が変わります。ご自身やご家族の状況に当てはめた具体的なシミュレーションが必要な場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談することも検討してみてください。
fp-happirich.comの既存ブログ記事一覧を確認できなかったため、内部リンクの提案は保留とさせていただきます。関連しそうなテーマ(iDeCo・NISA、50代の保険見直し、老後資金、年金分割など)の既存記事URLを教えていただければ、以下の形で本記事への相互リンクを追加いたします。
- 本記事から既存記事へ:関連する箇所に「(関連記事:○○)」の形でリンクを設置
- 既存記事から本記事へ:各記事の末尾や関連情報として本記事へのリンクを設置
