
「65歳で退職したら、失業給付はもらえるの?」
「ハローワークに行けば、あとは自動で振り込まれるの?」
65歳以上で退職した人が受け取れる高年齢求職者給付金は、手続きの順番を間違えたり、認定日を逃したりすると、受け取れなくなることがあります。
この記事では、次のことが分かります。
- 退職から入金までの6ステップと、期間の目安
- 認定日で失敗しないための注意点(出席・延期・就業の扱い)
- いくらもらえるかの計算方法と、受給額の目安
- 64歳で退職するか、65歳で退職するかの判断の軸
高年齢求職者給付金とは?対象者・金額・受け取れる時期の全体像

高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職した雇用保険の被保険者が、次の仕事を探している間に受け取る失業給付です。基本手当のように何回にも分けて受け取るのではなく、30日分または50日分を一括で受け取る一時金です。ハローワークでの認定は1回限りで終わります。ここでは、制度の全体像と基本手当との境目、対象になる人・ならない人を整理します。
65歳以上の失業給付は「一時金」|基本手当との違い
結論から言うと、受け取れる失業給付の種類は離職した日の年齢で決まります。雇用保険では、年齢は誕生日の前日に加算されたものとして扱われます。そのため、離職日が65歳の誕生日の前々日までなら基本手当、前日以降なら高年齢求職者給付金になります。
「誕生日の前日」という1日の違いで、制度が切り替わるわけです。主な違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 高年齢求職者給付金 | 基本手当(65歳未満) |
|---|---|---|
| 対象 | 離職日に65歳以上 | 離職日に65歳未満 |
| 必要な被保険者期間 | 離職前1年間に通算6か月以上 | 原則、離職前2年間に通算12か月以上 |
| 支給日数 | 30日分または50日分 | 90日〜360日(年齢・離職理由・被保険者期間などで変動) |
| 支給方法 | 一括(一時金) | 原則4週間ごとに分割 |
| 失業の認定 | 1回のみ | 原則4週間に1回 |
| 年金との関係 | 老齢年金と併給できる | 特別支給の老齢厚生年金は、受給中に支給停止(対象世代のみ) |
💡 年金との調整がどこまで及ぶか、総額はどちらが有利かは、後の章「年金との関係と、64歳退職・65歳退職のどちらが得か」で詳しく解説します。
受給できる人の条件と、対象外になるケース
受給の条件は2つだけです。
離職日以前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上あること、
そして失業の状態にあることです。
被保険者期間は、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月を1か月として数えます。そもそも雇用保険に加入していなかった人は、対象になりません。
ここでいう「失業の状態」とは、働く意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できない状態のことです。ハローワークの案内では、次のような人は支給の対象外とされています。
- 家事や学業、家業に専念する人
- 自営を始めた人、自営の準備に専念する人
- 次の就職がすでに決まっている人
- 雇用保険に入らない短時間の仕事だけを希望する人
- 自分名義で事業をしている人、会社の役員になった人
- 就職・就労中の人(試用期間を含む)
⚠️ 「もう働かず、年金で暮らすつもり」という場合は、この給付は受け取れません。就職する意思と能力がないと判断され、その状態が続く限り、支給の対象になりません。
なお、手続きは住所地を管轄するハローワークで、ご自身で行う必要があります。
参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000695108.pdf)/ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html)
高年齢求職者給付金の流れ|退職から入金までの6ステップ

退職してから入金されるまで、定年退職などでも1か月半〜2か月、自己都合退職なら2か月半〜3か月ほどかかります。ここでは6つのステップを順に示し、離職理由による期間の違い、受給期限の注意、入金までの資金繰りの考え方を整理します。
6ステップの全体像とスケジュール
流れは、離職票の受け取り、求職申込み、待期、説明会、認定日、入金の6ステップです。それぞれの時期と持ち物は次の表のとおりです。
| ステップ | やること | 目安の時期(管轄で異なります) | 持ち物・ポイント |
|---|---|---|---|
| ① 離職票の受け取り | 会社が手続きし、離職票-1・2が届く | 退職後10日〜2週間 | 届かなければ会社に催促する |
| ② 求職申込み・受給資格の決定 | 住所地のハローワークで、ご自身で手続き | 離職票が届いたらすぐ | 離職票-1・2、マイナンバーカード(ない場合は個人番号と身元の確認書類)、本人名義の普通預貯金口座(振込先は離職票-1の指定届で届け出る)。写真が必要かは窓口で確認 |
| ③ 待期7日 | 失業の状態で7日間が経過するのを待つ | 求職申込日から7日 | この間は支給されない |
| ④ 雇用保険説明会 | 認定日の指定、失業認定申告書の受け取り | 資格決定後1〜2週間以内 | 認定日の日時を必ず控える |
| ⑤ 認定日 | 本人が来所し、失業の認定を受ける | 説明会で指定された日 | 就職・就労の有無と求職活動を申告 |
| ⑥ 入金 | 指定口座に一括で振り込まれる | 認定日から1週間前後 | 時期は窓口で案内される |
待期は、離職票の提出と求職申込みを行った日から、失業の状態の日が7日間経過するまでの期間です。窓口の受付は平日の8時30分〜17時15分ですが、求職申込みには時間がかかるため、16時前の来所が勧められています。
💡 離職票-2には離職理由が記載されています。この理由が、後で説明する給付制限の有無に影響します。届いたら、記載内容を確認しておきましょう。
自己都合・会社都合・定年で入金時期はどう変わる?
離職理由によって、入金までの期間は変わります。違いが出るのは給付制限があるかどうかです。ハローワークのリーフレットによると、自己都合で退職した場合は、待期が終わった後さらに1か月が経つまで支給されません。令和7年3月31日以前の退職は2か月、重大な理由による解雇は3か月です。
定年退職や会社都合の退職は、自己都合退職とは扱いが異なり、給付制限はかかりません。目安は次の表のとおりです。
| 離職理由 | 待期 | 給付制限 | 求職申込みから入金までの目安 |
|---|---|---|---|
| 定年退職・会社都合 | 7日 | なし | 約1か月〜1か月半 |
| 自己都合(令和7年4月以降) | 7日 | 1か月 | 約2か月〜2か月半 |
| 重大な理由による解雇 | 7日 | 3か月 | 約4か月前後 |
⚠️ 表の期間は目安です。認定日の設定は管轄のハローワークで異なります。実際の日程は、説明会で渡される書類で確認してください。
受給期限は1年|遅れると日数が減る
手続きは、離職票が届いたらすぐに行うのが鉄則です。支給を受けられる期限は、離職日の翌日から1年で、基本手当のような期限の延長はできません。
期限を過ぎてしまうと受け取れないのはもちろん、期限ぎりぎりで認定を受けた場合も満額が出ないことがあります。失業の認定を受けた日から期限日までの日数が一時金の日数より少ないときは、期限日までの日数分だけが支給されます。
厚生労働省のリーフレットには、受給期限が残り15日の時点で認定を受け、15日分だけ支給される例が示されています。仮に50日分の資格があっても、支給は約3割にとどまる計算です。自己都合退職は給付制限で認定日が後ろにずれるため、手続きの先送りは特に避けたいところです。
✅ 「落ち着いてから」と後回しにせず、離職票が届いたら翌週には窓口へ行く。これが一番確実な対策です。
入金までの1〜2か月の資金繰りをどう考える?
高年齢求職者給付金は、退職してすぐに入るお金ではありません。定年退職でも入金は退職の約1か月半〜2か月後、自己都合なら約2か月半〜3か月後になります。この空白期間の生活費を、先に見積もっておくことが大切です。
退職後は、次のような支出が続きます。
- 健康保険料(任意継続、国民健康保険、家族の扶養のいずれか。任意継続には申請期限がある)
- 住民税(前年の所得に対して課税されるため、退職後も請求が続く)
- 通常の生活費、年金が入るまでの当面の支出
年金は偶数月の15日に、前2か月分がまとめて振り込まれます。年金の請求手続きがまだの人は、給付金の手続きと並行して確認しておきましょう。
✅ 入金までの月数分の生活費と、保険料・住民税の支払い分を足した額が、手元の資金で賄えるか。まずは、この一点を確認してください。退職金や預貯金の使い方は、ライフプランの全体像とあわせて検討するのが安心です。
参考:厚生労働省 ハローワーク「高年齢求職者給付金のご案内」(山口労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/content/contents/002608417.pdf、三重労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/002268515.pdf)/岩手労働局 Q&A(https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/002466523.pdf)/長野労働局「高年齢被保険者の方へ」(https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/kounenrei_hihokensyayou3010018.pdf)
認定日で失敗しない注意点|出席・延期・就業の扱い

手続きを済ませても、安心するのはまだ早いです。高年齢求職者給付金は、認定日に失業の状態であることを確認されて、はじめて支給が決まります。しかも認定は1回限りで、やり直しがききにくい仕組みです。ここでは、認定日の出席、行けないときの対応、認定日までに働いた場合の扱い、求職活動の実績について解説します。
説明会と認定日|認定は1回、本人の来所が原則
認定日は、必ずご本人が出席する日です。基本手当のように何度も認定を受ける仕組みではなく、高年齢求職者給付金の失業認定は1回限りです。
認定日の日時は、受給資格が決まった後の説明会で案内されるのが一般的です。認定日には、求職申込日から認定日までの就職・就労の事実と求職活動の状況を、失業認定申告書に書いて窓口に提出します。指定された日時には、必ずご本人が来所することとされていますので、代理での出席はできません。
💡 認定日の日時は、受け取ったらすぐスマートフォンのカレンダーにも登録しておきましょう。
認定日に行けない・延期になるのはどんなとき?
指定された認定日を変えられるのは、限られた理由だけです。基本手当向けのハローワークの案内では、就職したとき、採用試験や面接を受けるとき、本人の病気・けが、親族の看護、親族の危篤や死亡などが理由として挙げられています。いずれも、客観的に確認できる書類が必要です。
| 変更が認められやすい理由 | 主な証明書類 |
|---|---|
| 就職 | 採用証明書 |
| 採用試験・面接 | 面接証明書、受験票 |
| 本人の病気・けが | 診断書、領収書、処方箋など |
| 親族の看護 | 続柄が分かる書類、病院の案内 |
| 親族の危篤・死亡 | 診断書、死亡証明書、続柄が分かる書類 |
行けないと分かった時点で、事前にハローワークへ申し出て指示を受けるのが原則です。突然の病気などは、当日に電話で連絡します。ハローワークによっては、指定の時間に行けない場合でも、認定日当日の開庁時間内なら都合のよい時間に来所できることがあります。台風や地震などの災害時には、事前の申し出や証明書なしで、来所できる日に認定日を変更できる特例が設けられた例もあります。
⚠️ 私用での無断欠席は、認定されない可能性が高くなります。高年齢求職者給付金は認定が1回限りのため、救済の可否は窓口の判断になります。行けない場合は、必ず先に連絡してください。
認定日までに働いたらどうなる?パート・派遣・就職決定の扱い
結論として、認定日までに働いた場合も、就職が決まった場合も、必ず申告が必要です。そのうえで、支給対象から外れる可能性があります。
ハローワークの案内では、次の就職が決まっている方、就職・就労中の方(試用期間を含む)は、支給を受けられない人として挙げられています。また、労働時間の長短や収入の有無にかかわらず、就職・就労の事実を失業認定申告書に正確に書くこととされています。
| 状況 | 申告 | 扱いの目安 |
|---|---|---|
| 認定日前から、パート・派遣・アルバイトとして働いている | 必要 | 「就職・就労中」として、対象外になる可能性が高い |
| 就職先・派遣契約が決まっている(就業開始は認定日より後) | 必要 | 「次の就職が決まっている方」は対象外とされており、認定の可否を窓口で確認する |
| 単発・短時間の手伝い、内職など | 必要(時間・収入にかかわらず) | 失業の状態が続くかを、ハローワークが個別に判断する |
| 働く予定がなく、求職活動中 | 求職活動の状況を記載 | 条件を満たせば認定される |
⚠️ 就労の事実を書かないのは、不正受給の典型例です。全額の返還に加えて、悪質な場合は支給額の2倍以下の納付が命じられ、いわゆる「3倍返し」になることがあります。
✅ 求職申込みから認定日までの間に仕事の話が出たら、契約や就業開始の前に、窓口で「認定にどう影響するか」を確認しましょう。認定は1回限りなので、事前の相談が最大の防御策です。
求職活動の実績はどう数える?
認定を受けるには、認定日までの求職活動の状況を、失業認定申告書に書く必要があります。実績として数えられる活動は、一般に次のようなものです。
- ハローワークでの職業相談・職業紹介
- 求職者向けのセミナーの受講
- 求人への応募・面接
- 民間の職業紹介事業者への登録・相談
求人情報を眺めるだけ、知人に話を聞くだけでは、実績になりません。雇用保険説明会への参加は、実績として扱われるのが一般的ですが、扱いは管轄のハローワークで異なる場合があります。説明会の場で「これで実績は足りていますか」と確認しておくと安心です。
⚠️ 行っていない求職活動を、実績として書くのも不正受給の典型例です。実際に行った内容だけを、正確に記入してください。
参考:ハローワーク「雇用保険受給者のみなさまへ」(https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001382533.pdf)/北海道労働局 ハローワーク札幌「失業の認定とは」(https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/list/sapporo/kyusyokusya/hokenzyukyu/kourei/5.html)/東京労働局 ハローワーク府中「認定日の変更ができる場合について」(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/list/fuchu/koyouhoken_kyufu_ninteibichange.html)
高年齢求職者給付金はいくらもらえる?計算方法と受給額の目安

高年齢求職者給付金の金額は、「基本手当日額 × 30日または50日」で決まります。基本手当日額は離職前の賃金で決まり、2026年8月の改定で上限と下限が引き上げられました。ここでは、計算の手順と、月収別の目安を紹介します。
計算の3ステップ(賃金日額→基本手当日額→支給額)
計算は、次の3ステップです。
- 賃金日額 = 離職前6か月の賃金合計 ÷ 180(賞与は含みません)
- 基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(およそ50〜80%。賃金が低いほど高い率)
- 支給額 = 基本手当日額 × 30日(被保険者期間1年未満)または50日(1年以上)
賃金には、毎月決まって支払われる基本給や手当を含めます。賞与や退職金は含めません。支給日数は、被保険者期間が1年以上か未満かの2段階だけで、勤続20年でも30年でも50日分が上限です。
たとえば、離職前6か月の月収が平均30万円なら、賃金日額は30万円×6か月÷180=約10,000円です。公式の計算式を当てはめると、基本手当日額は約6,307円で、50日分は約31.5万円になります。
なお、基本手当日額の上限額は年齢区分ごとに定められていますが、法令上、65歳以上の区分はありません。65歳以上の高年齢求職者給付金には「30歳未満」の区分を適用すると、専門誌のQ&Aで説明されています。
2026年8月改定後の上限・下限と月収別の目安
2026年8月1日の改定後、65歳以上に適用される上限・下限は次のとおりです。
- 賃金日額の上限: 14,900円
- 基本手当日額の上限: 7,450円(旧7,255円)
- 基本手当日額の下限: 2,562円(旧2,411円)
月収別の目安は、次の表のとおりです。公式の計算式(30歳未満の区分)で算出しました。
| 離職前6か月の平均月収 | 基本手当日額 | 30日分(被保険者期間1年未満) | 50日分(1年以上) |
|---|---|---|---|
| 約9.6万円未満(下限適用) | 2,562円 | 76,860円 | 128,100円 |
| 15万円 | 4,000円 | 120,000円 | 200,000円 |
| 20万円 | 5,036円 | 151,080円 | 251,800円 |
| 30万円 | 6,307円 | 189,210円 | 315,350円 |
| 40万円 | 6,744円 | 202,320円 | 337,200円 |
| 約44.7万円以上(上限適用) | 7,450円 | 223,500円 | 372,500円 |
⚠️ 金額は概算です。実際の額は、賃金の内訳や端数処理によって変わり、受給資格の決定時にハローワークが算定します。
💡 月収が約44.7万円を超えても、受け取れるのは50日分で最大約37.3万円までです。雇用保険の給付には租税その他の公課を課さないと法律(雇用保険法第12条)で定められているため、所得税・住民税はかからず、確定申告も不要です。
参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更(令和8年8月1日から)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74837.html)/ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html)/労働新聞「賃金日額の上限は?65歳以上で求職者給付」(https://www.rodo.co.jp/faq/154103/)
年金との関係と、64歳退職・65歳退職のどちらが得か

65歳の誕生日をまたぐ退職では、雇用保険の給付額と年金への影響の両方が変わります。ここでは、年金との関係を整理したうえで、64歳11か月で退職した場合と65歳で退職した場合を、具体的な数字で比べます。
年金は止まらない|併給と在職老齢年金のポイント
高年齢求職者給付金は、老齢年金と同時に受け取れます。65歳以上の人の雇用保険と年金は調整されず、両方が支給されます。
一方、65歳未満で基本手当を受ける場合は事情が変わります。ハローワークで求職の申込みをすると、65歳になるまでの老齢厚生年金が全額支給停止になります。待期や給付制限の期間も、「基本手当を受けた日」とみなされて、停止の対象に含まれます。繰上げ支給の老齢厚生年金も対象です。
止まるのは65歳になるまでの期間の老齢厚生年金だけです。基本手当を受けている途中で65歳を迎えた場合も、65歳以降に受け取る老齢基礎年金と老齢厚生年金は、雇用保険の給付と調整されません。
もう一つ知っておきたいのが、在職老齢年金です。退職後に再就職して厚生年金に加入すると、賃金と老齢厚生年金(基本月額)の合計が65万円(令和8年度)を超えた場合に、超えた額の半分が年金から支給停止されます。老齢基礎年金は全額支給されます。高年齢求職者給付金そのものとは別の制度ですが、「受給後に働く」予定の人は、あわせて確認しておくと安心です。
64歳11か月で辞めるか、65歳で辞めるか
雇用保険の総額だけで見ると、64歳11か月で退職して基本手当を受けたほうが、多くなりやすいです。基本手当は、定年退職などの一般的な離職で、被保険者期間に応じて90〜150日分(20年以上で150日分)が受け取れるためです。高年齢求職者給付金は最大50日分で、日数が大きく異なります。
| 項目 | 64歳11か月で退職(基本手当) | 65歳で退職(高年齢求職者給付金) |
|---|---|---|
| 支給日数 | 90〜150日(被保険者期間20年以上で150日) | 30日または50日 |
| 基本手当日額の上限 | 7,830円 | 7,450円 |
| 支給方法・認定 | 原則4週間ごとに認定、分割で支給 | 一括、認定は1回 |
| 年金への影響 | 65歳未満の老齢厚生年金は支給停止(対象者のみ) | 年金は停止されない |
| 目安(賃金日額8,000円・被保険者期間20年以上) | 約78.7万円 | 約28.2万円 |
目安は、賃金日額8,000円(月収約24万円)で、定年退職・被保険者期間20年以上の場合です。基本手当日額は、64歳11か月で5,248円(×150日=787,200円)、65歳で5,644円(×50日=282,200円)です。差額は約50万円になります。
ここで見落としやすいのが、年金の停止です。停止の対象になるのは、65歳未満で老齢厚生年金を受け取っている人です。特別支給の老齢厚生年金は、男性は昭和36年4月1日以前生まれ、女性は昭和41年4月1日以前生まれの人が対象で、それ以降の生まれの人にはそもそも支給されません。
| 区分 | 65歳未満の老齢厚生年金 | 基本手当を受けたとき |
|---|---|---|
| 男性・昭和36年4月2日以後生まれ | 支給なし(特別支給の対象外) | 影響なし |
| 女性・昭和41年4月2日以後生まれ | 支給なし(特別支給の対象外) | 影響なし |
| 女性・昭和41年4月1日以前生まれ | 受給開始年齢に達していれば受給 | 求職申込み後、基本手当を受ける期間は支給停止 |
なお、共済組合などから支給される老齢厚生年金は、女性も男性と同じ受給開始年齢の扱いになります。
2026年時点で64歳以下の男性は、すべて「昭和36年4月2日以後生まれ」にあたり、特別支給の対象外です。この場合、基本手当を受けても年金への影響はありません。一方、対象世代の女性は、年金が約5〜6か月止まる可能性があります。たとえば、年金月額が10万円なら、停止額は約50〜60万円になり、基本手当の約50万円の上積みが、ほぼ相殺または逆転するおそれがあります。
⚠️ 上の年金停止の例は概算です。実際の停止月数や金額は、年金の種類や受給額、退職の時期で異なります。判断の前に、年金事務所で確認してください。
✅ 判断の軸は、次の4つです。
- ご自身が特別支給の老齢厚生年金の対象世代かどうか
- 雇用保険の被保険者期間が20年以上あるかどうか(基本手当の日数が変わる)
- 再就職までに時間がかかりそうか(基本手当は長期の生活保障になる)
- 退職日を動かせるか(会社の規程や退職金への影響の確認が必要)
退職日が65歳の誕生日の前々日までなら基本手当、前日以降なら高年齢求職者給付金です。1日の違いで給付が変わるため、退職日を決める前に、必ずハローワークで確認してください。
高年齢求職者給付金の流れに関するよくある質問

Q1 手続きは、退職後いつまでにすればよいですか?
受給期限は離職日の翌日から1年で、基本手当のような延長はできません。期限ぎりぎりで認定を受けると、期限までの日数分しか支給されません。離職票が届いたら、すぐにハローワークで求職の申込みをしてください。
Q2 自己都合で退職すると、どのくらい遅くなりますか?
待期7日に加えて、原則1か月の給付制限があります。令和7年3月31日以前の自己都合退職は2か月、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は3か月です。求職申込みから入金まで、目安は2か月〜2か月半です。定年退職は給付制限がなく、約1か月〜1か月半が目安です。
Q3 離職票が届かないときは、どうすればよいですか?
まず、勤務先の人事・総務に連絡して、発行の状況を確認してください。それでも届かない場合は、住所地のハローワークに相談します。受給期限があるため、早めに動くことが大切です。
Q4 70歳以上でも受給できますか?
受給できます。65歳以上であれば、年齢の上限はありません。離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あり、失業の状態にあれば、条件を満たします。離職のたびに、何度でも受給できる点も特徴です。
Q5 受給後すぐに再就職したら、返還が必要ですか?
認定日に失業の状態であれば、一時金を返す必要はありません。ただし、認定日までに就職・就労していた事実を申告しないと、不正受給になります。なお、再就職手当は基本手当の受給資格者が対象の制度で、高年齢求職者給付金の受給者は対象外です。
参考:ハローワークの高年齢求職者給付金のご案内(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000695108.pdf)/労働新聞「返還の必要あるか 高年齢給付金 給付から日数浅く」(https://www.rodo.co.jp/faq/135653/)/労働新聞「再就職手当を受給? 65歳以上離職だとしても」(https://www.rodo.co.jp/faq/145632/)
まとめ|65歳での退職前に、手続きと退職日を確認しよう

高年齢求職者給付金は、65歳以上で退職したときに、年金と並行して受け取れる失業給付の一時金です。ただし、離職票の受け取りから認定日、入金までの流れを押さえ、認定日で失敗しないことが大切です。
この記事のポイント
- ✅ 離職日が65歳の誕生日の前日以降なら高年齢求職者給付金、前々日までなら基本手当
- ✅ 金額は基本手当日額の30日分または50日分。2026年8月の改定後、日額の上限は7,450円で、50日分なら最大約37.3万円
- ✅ 離職票が届いたらすぐ求職申込み。受給期限は離職日の翌日から1年で、延長できない
- ✅ 認定日は本人が出席する。就業や就職の決定は、必ず申告し、契約や就業開始の前に窓口へ相談する
- ✅ 65歳以上なら年金は止まらない。64歳台の退職は、年金の停止と給付の総額を比べて判断する
退職日や年金の受け取り方、再就職の予定によって、最適な進め方は変わります。迷ったときは、管轄のハローワークや年金事務所、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士に相談しながら、無理のない計画を立ててみてください。
